社長コラム

三国志から学ぶ(その13) 判断・決断

前回コラムでは、映画「レッドクリフ」からみた権限委譲組織の前提となる「適材適所」について考察した。
「適材適所」の目的は、トップが個々の部下の持つ強みを知り、それを最大化することにあると述べた。
そのためには人間観察力(人間洞察力)が不可欠となる。現場責任を部下に任せる(役割分担)ことは権限委譲
することであり、それにより権限委譲組織ができる。そうなると組織を最適化する上での規律、現場判断力が
求められる。今月コラムでは権限委譲における判断・決断の要諦は何かについて語っていきたい。
(注:劉備玄徳=劉備・曹操孟徳=曹操・孫権仲謀=孫権・諸葛亮孔明=孔明・周瑜公瑾=周瑜)


一瞬の判断ミスで組織が窮地に陥ることは歴史をみてもよく判る。判断が常に正しいとは限らない。
時に人間は間違った判断をする。そのため情報を読み解く力、人間観察力、洞察力等を磨かねばならない。
正確な状況分析をしながら状況がどう動くか?相手がどう動くか?相手の心をいかに読みきるかにつきる。
決断とは、いくつかの判断の中から現時点で最適であると思われるものを選択し決定することであり、
即断即決する場合と熟慮して決断する場合がある。意思決定は時と場合にもよるが、状況に応じた実行
スピードとタイミング等の柔軟性が大きく問われる。


判断と決断との違いは、判断(judgment)はマネジメントの役割、決断(decision)はリーダーの役割である。
何故なら、決断こそがリーダーに与えられた最大の役割(責任)であるからである。このリーダーの決断で歴史
はガラリと変わる。歴史に「もし」はつきものであるが、「もし」明智光秀が本能寺の変を決断実行しなかったと
すれば、その後の歴史はどう変わっていたのか誰も想像もつかない。リーダーの決断は大きい。


では、何が正しい判断なのか?その判断力をどう培っていくのかを、映画「レッドクリフ」=「赤壁の戦い」
から学んでいきたい。曹操は、赤壁に大軍を率い長期的に呉に睨みをきかせることで、兵力の違いの大きさに
圧倒された呉が降伏すると判断した。曹操の読みどおり、当初呉は重臣筆頭である張昭を中心に降伏論で固
まっていた。そこに劉備、孔明と親交がある呉の宰相魯粛が、魏軍との抗戦を呉主の孫権に進言し採択され
た。孫権の抗戦する判断、決断の決め手は、赤壁の戦いを想定した呉軍の得意とする強力な水軍の存在と、
呉が魏に降伏することで、中国全土は魏の曹操により統一され、呉は魏の傘下となることで自国の独立性を失
うことであった。
劉備、孔明の立場から見た判断、決断は、呉が魏に降伏すれば、劉備、孔明が唱えた「天下三分の計」=
三国により中国全土の治安の安定を図ろうとした構想が潰えることになる。呉の降伏論は何としても避けたか
った。そのため呉軍との連合軍により、赤壁に進行した魏軍の侵攻を阻止する必要があった。魏軍の思惑は
当初は長期戦であった。ところが疫病の発生、兵站の心配もあり短期戦に切り替えたことで大敗北を喫した。


前回コラムでも述べたが「火攻めの計」と「連環の計」、黄蓋(こうがい)と、ほう統が判断し進言した計を、
決断採用し周瑜が孫権の容認を得たことで孫権軍の戦略方針が決定した。結果的に周瑜の決断は正しかった。
部下は何故、そのような判断に至ったのか?その根拠を決断決定者であるリーダーに明確に示す必要がある。


自軍と敵軍の戦力分析およびSWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)長期、短期的側面からみたメリット、デメリット
分析、失敗したときの最悪のシナリオを想定した打開策まで予め織り込んだリスク分析、マネジメント対策を事前に
講じておくことで判断力を高めることができる。


判断力は理論(知識体系)と実践(経験)の両面から学ぶ。「理論なき実践は暴挙なり、実践なき理論は空虚なり」
の格言もある。最初に感性(感じる)とロジック(思考)で敵の動きを観察する。次に現状分析から仮説を立て検証する。
ゴール(勝利)をイメージし、そのためのシナリオ(プロセス)構築を行う。自軍での勝利イメージ(共感)を共有するために、
2つのそうぞう(想像=感性イメージ・創造=思考分析)で仮説検証を行う。
バックキャスト(ゴールから今やるべきプロセスを予測する)とフォアキャスト(現状からゴールを予測する)
予想ゴールと現状の両面からクロス予測するバランス感覚と、大所高所から俯瞰することが肝要となる。


次回は判断・決断に於ける時間の使い方、時間に支配されるのではなく、時間を支配するタイムマネジメント
・判断力の強化について語っていきたい。


平成29年8月31日


 

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