社長コラム

三国志から学ぶ(その18) リスクマネジメント

前回コラムのテーマ情報分析力のキーワードは考える力(思考力)であった。今回コラムでは情報分析力の中でも最重要課題、リスクマネジメントについて考察していきたい。
(注:劉備玄徳=劉備 ・曹操孟徳=曹操・孫権仲謀=孫権 ・諸葛亮孔明=孔明)


リスクマネジメントに於けるトップの役割は一体何であろう?それは最悪のシナリオを想定し、そうならないためにも事前に予防シミュレーション(損失の回避策)を考えておくことではないだろうか。それによって、仮に最悪な事態になったとしても、慌てふためくことがないからだ。


三国志「夷陵(いりょう)の戦い」は義兄弟である関羽、張飛を相次いで呉軍によって殺害された蜀軍(劉備)の呉軍(陸遜)に対する報復の戦いである。戦い当初は大軍を動員した蜀軍は勢いにのって呉領内に深く攻め込んだが、呉軍山間部の要塞により進行を阻まれた。そのため蜀軍は長期戦を想定して野外で守りを固めた。だが戦況は膠着状態に陥り、兵の疲労で軍の士気が落ちたところを、呉軍一気の総攻撃(火攻め)によって大敗北を喫した。この戦いで陸遜は2つの孫子の兵法を用いて勝利した。
1つめは「逸を以って労を待つ」=味方が劣勢の時は守りを固めて敵の疲れを待ち、敵の疲れに乗じて一気に叩いた。
2つめは「兵は拙速を聞く」=万全の態勢を固め、勢いにのった短期決戦によって早期収拾を図った。


劉備がリスクを見誤ったとすれば2つある。

①「絶地」=敵領内深く進攻したところには、長くとどまってはならない。

②中国故事「三十六計、逃げるに如かず」=撤退の時期を誤らないことである。勝ち目がない戦いは、一時的に撤退して戦力を温存し、反転攻撃の準備を行うことを示唆している。

劉備が軍師孔明の諫言を聞き入れたとすればリスク回避はできたであろう。これは企業経営者にも同じことが言える。トップは聞く耳を持たねばならない。ただ歴戦の強者であり兵法にも通じていた劉備の胸中を推しはかると、関羽・張飛を殺害された怒りと悲しみのために冷静さ(感情コントロール)を失ったことは疑う余地もない。


上記の計画の要所が「始める時に終わりを決める」であるとすれば、リスクマネジメントの要所は、戦いが始まり終わるまでの想定されるリスクの事前洗い出しにより損失を防ぐことである。人の動き、時間の動き、状況の変化等、先を見通して動くことが肝要となる。


リスクと課題(すでに起きてしまったリスク)の関係を、医者の診断に置き換えてみる。
医者は患者が自覚していない病状について、医者が診断して初めて患者がリスクを自覚する。そこからリスク回避に向かって物事が動いていく。その課題を顕在化して、それを予防し治療することがリスク回避である。


(リスク=潜在的な問題。課題=顕在化した問題。リスクが顕在化すると課題となる)
潜在化したリスクを課題として顕在化させ解決することがソリューションである。
これに対し、真のリスクは潜在しているリスクが判らないことであり、最大のリスクはリスクをリスクと思わないことである。その予防対策としては常に危機意識をもつことに他ならない。


昨年は相次ぐ天災(西日本豪雨・大阪震度6弱・北海道震度7)に見舞われた。
自然災害の発生時に於けるBCP(災害時での業務継続等のリスク対策)がリスクマネジメントの具体例として挙げられる。まさに企業はゴーイングコンサーン(企業継続)である。


リスクマネジメントに於けるトップの考え方は「ピンチ=リスクの中からチャンスを見つけることだ」と言われている。
松下幸之助の名言にも「不景気もまたよし」と記されている。景気の良い時には手を打たなかった社内改革が不景気の時には断行できた。不景気が会社を強くする。まさに「ピンチはチャンスなり」である。真の自信とはピンチをチャンスに変えることかもしれない。


昨年の世界の動きを一言で表わすと、ナショナリズム・政治・経済格差等の問題に端を発した「分断」にあった。これらの既に起こった事象に対す予防策(リスクマネジメント)は何かと問われると、歴史は仁(思いやり)と中庸(偏らなくて正しいこと)と教えてくれるような気がする。


次回に続く。


 

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